はい、というわけで昨日の記事で予告した通り、今日から(できる限り)毎日スイートプリキュアの各話感想を上げていこうと思います。
それではさっそく行ってみましょう。
第1話『ニャプニャプ〜! スイートプリキュア誕生ニャ♪』
演出:境宗久
脚本:大野敏哉
作画監督:小島彰、山岡直子、山崎展義
(上記全て敬称略)
・シリーズでも屈指の長さのアバン
スイートの構成は今作がアニメ脚本担当初となる大野敏哉氏が参加されている影響からか、1話目からしてかなり異例の構成となっている。
着目すべきはアバンの長さ。
OPに突入するまでに7分50秒ほどと他のシリーズ作品に比べてもかなり長い。
さらに、このアバンにはプリキュアとなるキャラクターとは別の世界の風景しか描写されておらず、肝心のプリキュアが一秒足りとも登場しないままでもある。
ゆえに、視聴者がプリキュアである響・奏の姿を観るのはOP映像が初であり、実際の声を聞くことができるのはAパートに入ってから。
今までのシリーズの流れには無かった構成で始まるため、スイート以前までのフォーマットに慣れている人ほど驚く構成となっている。
ちなみに声優好きな人ほどアバンに登場するキャラの中の人の豪華さにびっくりする。
オールベテランの布陣で展開される様には東映の覚悟を感じたり感じなかったり。
・巧みな構成
とはいえ、アバンの作りそれ自体がそれまでのフォーマットには見受けられなかったものではあるが、作品全体を通した上での構成はしっかりとしている。
特に注目したいのが最序盤で描写される鳥のつがいのシーン。
スイートプリキュアという作品は、人には表と裏があり、それらは切り離して考えられるものではないと1話から最終話までとにかく強調して描写している。これこそがこの作品の強みにして唯一無二の魅力と断言してしまっていいだろう。
変身前に嫌というほど聞かされる決まり文句の「絶対に許さない!」が最終話で一つの答えに着地するのを筆頭に、この作品で繰り返し描写されるものには制作者サイドからのメッセージ性を強く感じられる。鳥のつがいはそのスタートラインといってもいい。
表と裏の近似性――表裏一体と自分とは異なる存在(他者)との関係性についてのメッセージ性は、この鳥のつがいからOP突入まで連続して描写される。
例えばそれは、伝説の楽譜(幸福のメロディと不幸のメロディ)・アフロディテとメフィスト・ハミィとセイレーン・響と奏。
一番分かりやすいのは伝説の楽譜。
音符を並べ替えるだけで、聴く人を幸福にしていた音楽が一転して不幸に陥れてしまうという仕組み。存在それ自体が悪というわけではなく、どのように組み立てるか、演奏するかに因るというのが本作らしい作りである。
アフロディテとメフィストも同様。メフィストは黒幕であるノイズに操られているだけとはいえ、その力を駆使して不幸のメロディを作り出すことが可能。であるならば、同じ音楽の世界の住人であるアフロディテにも出来ないはずはなく、事実として音符たちを不幸のメロディとして楽譜に定着させないために譜面を操り、響と奏のいる世界の各地へ音符たちを分散させていた。大元の力が同じ、というのはニチアサ仲間の仮面ライダーを思わせる。
ハミィとセイレーンは言うまでも無く歌姫として音符に多大な影響を与える。歌手の精神性によってどのようなメロディを奏でるかは自由なので、元々清らかな心を持っていたセイレーンが反転してしまった形であるなら、本来の清らかさを最後まで演じたのがハミィである。シナリオの中盤でセイレーンはその精神性を取り戻すため、ハミィとの関係性は本来(?)の猫の姿に戻れないという形で描写されていくことになる。これこそが、後にリアルタイムで何度も話題になった聖歌先輩と和音がプリキュアにならなかったことの意味合いを深める点となっていく。
響と奏の関係性というのはシリーズの中でも珍しい。
というのも、彼女たちの関係性は既に構築された状態であり、お互いが初対面というわけでもない。1話時点でお互いが何であるか、という交流は不要のため今作では過去に喧嘩をしてしまい、それ以来すれ違いが起きたまま、というちょっと暗めな設定が付与されている。
このあたりの暗くネガティブな描写は『中学生日記』を手がけた大野氏のセンスが光っており、毎話でその実力を発揮してくれている。そんなシーンを高橋晃氏が手がけた美麗なキャラクターデザインと高梨康治氏のBGMが緩和してくれているので、実際の視聴バランスとして胃が痛くなるようなものではない。観ていて楽しいかは個々人によるが。
・〆は変身バンク、そしてなまため成分溢れる次回予告と「またみてね」
前作の『ハートキャッチプリキュア!』も同様だが、スイートも1話の〆は変身バンクとなっている。そのためプリキュアの戦闘お披露目は次の2話にお預けなのだが、次回予告で早速ひびかなが喧嘩しており何やら不穏な空気が漂う。なまため作画のおかげでこの喧嘩も割と雰囲気が緩和されている。スイートではちょくちょくなまためさんの作画が光る回が存在しているので、該当回ではその都度コメントしていくつもり。
なお、このひびかなの喧嘩が「いつものやつ」となってくるのは伝説のおんぶ回と名高い第7話。ここで視聴者もどのように彼女たちの喧嘩を見届けていくべきか分かってくる。エンドカードの存在は偉大だ。最初に気付いた人は本当に凄い。
というわけで今回はこれで終わり。
エピソードの構造について今回は書いた感じなので、シーンに対する解釈などはその時の気分で書いていこうかと思っています。
毎日上げると言いながらしょっぱなから日付を越えてしまっているあたり、先行き不安な感想マラソンであるがめげずに頑張りますのでお暇な人は是非ともお付き合いくださいませ。
それでは、また次の2話でお会いしましょう。
ではでは~。